糖尿病、甲状腺疾患、内分泌疾患、骨粗鬆症などについて、日々の診療で患者さんからご相談いただく内容を中心に、わかりやすくお伝えします。
2026年9月7日 糖尿病と言われたら眼科受診が必要?症状がなくても眼底検査を受ける理由
掲載日:2026年9月7日
糖尿病と診断された方に、内科から「眼科も受診してください」とお伝えすることがあります。目がよく見えていて、困った症状もないのに、なぜ眼科を受診する必要があるのでしょうか。
その理由は、糖尿病網膜症が自覚症状のないまま進行することがあるためです。見え方に異常が現れてからでは、すでに治療が必要な段階に進んでいる場合があります。糖尿病の治療では、血糖値やHbA1cを確認するだけでなく、目・腎臓・神経などの合併症を定期的に確認することが大切です。
糖尿病網膜症は、慢性的な高血糖などの影響により、目の奥にある網膜の細い血管が傷む病気です。網膜は、目に入った光を感じ取り、視覚情報として脳へ伝える重要な組織です。
初期には小さな出血や血管の変化が起こりますが、多くの場合、見え方にはほとんど変化がありません。その後、血管の閉塞や網膜のむくみ、新生血管などが生じると、視力低下、かすみ、視野の異常につながることがあります。重症化すると硝子体出血や網膜剥離を起こし、視力を大きく損なう可能性があります。
糖尿病網膜症の難しい点は、初期だけでなく、ある程度進行しても自覚症状を欠くことがある点です。片方の目に変化があっても、もう片方の目で補われ、異常に気づかない場合もあります。視力検査が良好であることだけでは、網膜症がないとは判断できません。
日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2024』では、網膜症の発症・進行を防ぐうえで定期的な眼科受診が推奨されています。また、糖尿病と診断された、あるいは糖尿病が疑われる時点で眼科を受診し、網膜症の有無と病期を評価することが重要とされています。
眼科ではどのような検査をするのでしょうか?
眼科では、視力だけでは分からない網膜の状態を確認します。病状によって行う検査は異なりますが、代表的なものは次のとおりです。
眼底検査:目の奥の網膜を観察し、出血、血管の異常、新生血管などを確認します。
散瞳眼底検査:点眼薬で瞳孔を広げ、網膜の広い範囲を詳しく観察します。検査後しばらくは、まぶしさや見えにくさが残ることがあります。
OCT(光干渉断層計):網膜の断面を撮影し、黄斑部のむくみなどを調べます。
蛍光眼底造影検査:必要な場合に、網膜血管の詰まりや漏れ、新生血管の状態を詳しく評価します。
すべての患者さんにすべての検査を行うわけではありません。眼科医が眼底所見や症状に応じて必要な検査を判断します。
糖尿病と診断された方は、目の症状がなくても、まず眼科で現在の網膜の状態を確認しましょう。その後の受診間隔は、網膜症の有無や重症度、血糖コントロール、糖尿病の罹病期間、妊娠などによって異なります。網膜症がない方では年1回程度が一つの目安として案内されることがありますが、すでに網膜症がある場合や眼科医が必要と判断した場合には、より短い間隔での受診が必要です。
かじもと内科 糖尿病・内分泌内科では、糖尿病専門医が血糖値やHbA1cだけでなく、網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化などの合併症を含めて診療しています。目の症状がなくても、眼科受診歴を確認し、必要に応じて地域の眼科医療機関と連携します。堺市・なかもず周辺で、健診後の精査や糖尿病治療、合併症の確認をご希望の方はご相談ください。
2026年7月27日 インスリン皮下注射で大切なポイント ~毎日の「打ち方」が血糖コントロールを左右します~
掲載日:2026年7月27日
インスリンは、糖尿病治療に欠かせない大切なお薬です。
しかし、同じ量を注射していても、注射方法によって効果が変わることがあります。
今回は、インスリン自己注射で特に大切なポイントをご紹介します。
① 注射部位を毎回少しずつ変えましょう
同じ場所ばかりに注射すると、皮膚の下に「しこり(リポハイパートロフィー)」ができることがあります。
この部分に注射すると、インスリンの吸収が不安定になる・血糖値が乱れやすくなる・低血糖や高血糖の原因になることがあります。
お腹であれば毎回2~3cm程度ずらしながら注射することをおすすめします。
② 注射前には注射部位を確認しましょう
注射する前に、しこりがないか・赤みや腫れがないか・痛みがないかを確認しましょう。
気になる部分は避けて注射してください。
③ 注射針は毎回交換しましょう
「まだ使えそうだから」と同じ針を何回も使用していませんか?注射針は一度使用すると先端がわずかに変形します。
使い回しにより、痛みが強くなる・皮膚を傷つける・感染のリスクが高まる・しこりができやすくなることがあります。
できるだけ毎回新しい針を使用しましょう。
④ 正しい注射時間を守りましょう
インスリンにはさまざまな種類があります。
食直前に打つもの・食事の10~15分前に打つもの・毎日決まった時間に打つものなど、それぞれ適切なタイミングがあります。
自己判断で変更せず、医師・看護師・薬剤師の説明に従ってください。
⑤ 保管方法も大切です
未使用のインスリンは冷蔵庫で保管します。使用中のペンは、製剤ごとの添付文書に従い室温で一定期間保管できるものが多くあります。高温となる車内や直射日光の当たる場所には置かないようにしましょう。
⑥ 分からないことは自己判断しない
血糖値が高い・低い、注射が痛い、しこりがあるなど、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。
長く自己注射を続けている方でも、知らないうちに自己流になっていることは少なくありません。
当院では自己注射手技も必要に応じ確認しています。
お気軽にご相談ください。
参考文献
Forum for Injection Technique and Therapy Expert Recommendations. FITTER Forward Expert Recommendations for Best Practice in Diabetes Injection Technique. Mayo Clin Proc. 2023.
Japanese Diabetes Society. 糖尿病診療ガイドライン(最新版).
Japanese Diabetes Society. インスリン療法マニュアル(最新版).
2026年6月16日 梅雨時期の血糖管理とマンジャロについて
掲載日:2026年6月16日
梅雨入りの季節となりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
最近は気温や湿度の上昇に伴い、運動不足や食生活の変化から血糖コントロールが乱れやすい時期です。体調管理にご注意ください。
さて、最近テレビや新聞、インターネットなどでマンジャロに関する報道を目にする機会が増えています。
マンジャロは2型糖尿病治療薬であり、血糖値やHbA1cの改善に加え、体重減少効果も期待できる有用な薬剤です。一方で、全ての患者さんに適しているわけではなく、副作用や体格、年齢、合併症などを考慮した適切な使用が必要です。
当院では糖尿病専門医・内分泌代謝科専門医として、血糖値やHbA1cだけでなく、患者さんの生活背景や体重変化、筋肉量、食事摂取状況なども踏まえながら治療方針を決定しています。
また、吐き気や便秘などの副作用の有無、体重減少の程度を定期的に確認し、薬剤の継続が患者さんの利益につながっているかを常に評価しています。場合によっては減量や中止、他の治療への変更を提案することもあります。
糖尿病治療で大切なのは単に体重を減らすことではなく、長期的に良好な血糖コントロールを維持し、合併症を予防することです。
当院では食事療法や運動療法を基本としながら、患者さんそれぞれに適した治療を心掛けています。糖尿病や血糖値、HbA1cについて気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
2026年7月28日 チラージンS®(レボチロキシン)はいつ飲むのがよいのか?
掲載日:2026年7月28日
甲状腺機能低下症や橋本病の治療で使用される**チラージン®(レボチロキシン)は、多くの患者さんが長期間内服するお薬です。
診察室でも、「朝食後に飲んでもいいですか?」「コーヒーと一緒でも大丈夫ですか?」というご質問をよくいただきます。
おすすめは「朝食前の空腹時」です。
チラージンは朝起きてすぐ、水または白湯で内服し、その後30~60分は飲食を控える方法が最も推奨されています。
食事をすると薬の吸収が低下し、十分な効果が得られないことがあります。そのため、空腹時に内服することで吸収が安定し、甲状腺ホルモンの値(TSHやFT4)も安定しやすくなります。
また朝に飲めない場合は就寝前でも可能です。仕事や生活リズムの都合で朝食前の内服が難しい方もいらっしゃいます。
その場合は、夕食から3~4時間以上空けた就寝前に内服する方法も選択肢の一つです。
生活スタイルに合わせて、続けやすい方法を主治医と相談しましょう。
一緒に飲まない方がよいものもあります。
次のようなものはチラージンの吸収を低下させることが知られています。
・カルシウム製剤
・鉄剤
・マグネシウムを含む製剤
・アルミニウムを含む胃薬
・リン吸着薬
・胆汁酸吸着薬
これらのお薬とは、できれば4時間程度間隔を空けることが望ましいとされています。
「朝食前でなければ絶対にいけない」というわけではありませんが、毎日同じ時間帯・同じ条件で継続することが、安定した治療につながります。
当院では、患者さん一人ひとりの生活スタイルに合わせた内服方法をご提案しています。内服方法でお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
**参考文献**
* 日本甲状腺学会. 甲状腺疾患診療ガイドライン.
* Jonklaas J, et al. *Guidelines for the Treatment of Hypothyroidism*. Thyroid. 2014.
* Taylor PN, et al. *2013 ETA Guideline: Management of Subclinical Hypothyroidism*. European Thyroid Journal. 2013.
2026年6月29日 妊娠を希望される方と甲状腺機能
掲載日:2026年6月29日
妊娠を希望される方や不妊治療中の方では、甲状腺機能についてご相談を受けることがあります。
甲状腺ホルモンは、妊娠の成立や胎児の発育に重要な役割を担っています。そのため、甲状腺疾患のある方や、甲状腺機能異常が疑われる方では、適切な評価と管理が大切です。
以前は「妊娠を希望する方ではTSHを2.5 mIU/L未満に保つこと」が広く知られていました。
しかし近年では、TSHの数値だけで一律に治療方針を決めるのではなく、
・甲状腺ホルモン(FT4)
・甲状腺自己抗体
・甲状腺疾患の有無
・妊娠・不妊治療の状況
・これまでの経過
などを総合的に評価し、それぞれの状況に応じて対応することが重視されています。
そのため、「TSHが2.6だから必ず治療が必要」というわけではなく、逆に「TSHが正常だから全く心配ない」とも言い切れません。
検査結果や症状、これまでの経過を踏まえて判断することが大切です。
当院では、甲状腺疾患をお持ちの方や甲状腺機能異常が疑われる方について、現在のガイドラインやエビデンスを参考にしながら、保険診療の範囲で適切な検査・診療を行っています。
妊娠を希望されている方や、不妊治療中で甲状腺機能が気になる方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
・Alexander EK, et al. Thyroid. 2017;27:315-389.
・ASRM Practice Committee. Fertil Steril. 2024.
・ETA Guideline. Eur Thyroid J. 2021.













